導入のきっかけ
レコメンドエンジンでの利益率向上と
運用負荷の改善に大きな課題あり
「LOHACO」はアスクル株式会社が運営する一般消費者向けの通販・ネットショッピングサイトです。LOHACOでは、従来からサイト内にレコメンドエンジンを導入していましたが、「あなたにおすすめ」などレコメンド枠に表示される商品を売り手側の目的に応じて最適化できない点、レコメンドエンジンにおける運用の負荷を下げれていないという2つの課題に悩んでいました。
最適化の課題について、LOHACOで活用しているレコメンドエンジンでは、Webサイトに訪れたユーザーの閲覧データやクリックデータを元におすすめの商品を選出し、特定の枠に表示します。実際の顧客行動に基づいたデータから最適な商品を表示する仕組みは、購買数や売上高を最大化できる一方で、「利益率の低い商品」や「在庫がない商品」が掲載されるといった課題が表面化していました。
運用負荷の課題について、ある商品の在庫情報を反映させるために運用担当者が手動でデータ入力を実施していました。膨大な数の商品を取り扱うLOHACOでは手動管理する手間は非常に大きく、刻一刻と在庫状況が変化するためリアルタイムに反映させること実質的に不可能です。また、商品在庫の反映にはタイムラグが生じ、おすすめされたのにその商品が在庫切れで購入できないといった、顧客体験を毀損するケースが発生してしまっていました。
これらの課題解決に向けて、フライウィールから統合データプラットフォームを活用したレコメンドエンジンを使えば2つの課題を解決できると提案を受け、導入を進めることに決めました。
どんなことを実施したか?
データソースを横断した統合データプラットフォームの構築と
レコメンドエンジンとの連携で解決
はじめに、データソースを横断した統合データプラットフォームの構築とレコメンドエンジンへの活用という構想を描き、アスクル社内の各部署と協業体制を築きました。その後、各部門・各システムが保有するデータを統合したプラットフォームを実際に構築し、レコメンドエンジンやその管理システムと連携することで「ユーザー体験の向上」「業務効率化」「経営目線での全体最適化」といった「三方良し」の実現を狙いました。
まず、レコメンドエンジンと連携する商品アイテム数を増やし、おすすめに表示される商品カバレッジを拡大します。従来は処理量の制約により一部の人気商品データのみが連携されていました。そこでシステムをオンプレからクラウドに移行し分散処理を行うことで、データ処理量を大幅に増加させることを推進しました。
次に、在庫状況をレコメンドエンジンにいち早く反映させて、在庫のある商品のみを表示させるワークフローの実現です。そのためには、ECサイトで保有する商品閲覧やクリックデータだけではなく、他部署の別システムが保有する在庫情報との連携が必須です。LOHACOでは、配送センターが東日本と西日本で分かれているため、システムや部門、地域を踏まえたデータ連携・統合・整備を実施しました。
最後に、ビジネス目標に応じてレコメンドエンジンを最適化するために、サイト運用者が利用するキャンペーン管理システムとデータ連携を実現しました。商品閲覧やクリックのデータのみを使ったレコメンドでは、それら指標を最大化することしかできません。利益率や在庫情報といった購買行動以外のデータを元に、おすすめ表示される商品を調整できる機能を追加することで、時宜のビジネス目標に応じた最適化を進めることができるようになりました。
導入後の効果
データ統合によりクリック率、買い物かごへの商品追加数、
利益率といった指標を大幅改善
部門やシステムごとにサイロ化されたデータを統合したプラットフォームを構築し、それらをレコメンドエンジンと連携したことで、おすすめ商品枠におけるカスタマージャーニーに好影響をもたらしました。具体的には、おすすめ商品枠のクリック率は昨対比で4倍に、「買い物かご」への商品追加数は3.4倍に増加しました。また、在庫情報のデータ反映が自動化かつリアルタイム化したことで、従来までの手動入力をしていた業務負荷が大幅に改善され、在庫がある商品のみをおすすめ商品枠に表示することができました。さらに、利益率を考慮したキャンペーン設計が可能になったことで、従来までのキャンペーンと比較して利益額を2.2倍にすることに成功しました。
このように、部門やシステムごとにサイロ化されたデータを統合したプラットフォームを構築し、レコメンドエンジンとの連携を通じて「ユーザー体験の向上」「業務効率化」「経営目線での全体最適化」の三方良しを実現することに成功することができました。
お客様からのコメント
フライウィール社のレコメンドエンジンは、買い手側の目線だけでなく、売り手側の目線も考慮したレコメンドエンジンでした。このようなレコメンドシステムは他に見当たりません。戦略的商品でもレコメンドとして積極的には打ち出せない商品はいくつかあります。売り手側の積極的な商品掲載や商品利益率を考慮したコントロールができませんでした。ですが、フライウィール社では利益率を考慮したレコメンドを表示でき、実際の効果も出ました。現在も尚、社内で高く評価され続けています。
また、フライウィール社との取り組みは非常にスムーズに進行できたのが印象的でした。通常のパートナー様との取り組みの場合、サービスを導入する目的が多いため、営業担当が間に入り、仕様書通りに情報をインプットしていくという事が多いです。一方フライウィール社とは直接エンジニアと会話して目的と課題を共有した上で、案件を進めることが出来た結果、スムーズな導入ができました。
理解力と知識のあるエンジニアチームだったため、自分たちが置いていかれることがあるほど、フライウィールのエンジニアは目的、課題感を汲み取っていただき、社内のチームかと錯覚するほどのワンチーム感がありました。
掲載日: 2021年 4月 1日