導入事例:日本生活協同組合連合会

日本生活協同組合連合会

ツール導入でDXは完了しない
データ「統合」からデータ活用が広がる

    本当のデータ価値の議論・提案から、今まで無理だろうとか
    考えもしなかった「新しい事業」への繋がりを導き出していきたい

    日本生活協同組合連合会
    (右)新井田匡彦 氏 事業企画・デジタル推進本部 本部長スタッフ DX-CO・OPプロジェクトリーダー
    (左)峰村健史 氏 事業企画・デジタル推進本部 デジタルマーケティング部 部長(取材当時)

    導入のきっかけ

    実は進んでいた、CO・OPにおける基幹システムのデジタル化
    先進的な挑戦の一方で、データ活用が十分に行き届かないジレンマ

     日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)は 2020 年より「DX-CO・OPプロジェクト」を、コープ東北サンネット事業連合、コープデリ連合会、東海コープ事業連合と、4者共同で進めています。これは全国16の地域生協を横断的に包括した、データ活用・DX推進への取り組みです。

     「DX-CO・OPプロジェクト」開始以前より、全国各地の生協においてデータ活用に向けたツールの導入は始まっていました。アマゾン ウェブ サービス (以下、AWS) やGoogle Cloud (以下、GCP) など、クラウドサービスを導入している生協もあるなど「データ活用」というテーマへの意識は共有され、基幹システムのデジタル化は進んでいました。しかし、データ活用を具体化する工程については、システムのデジタル化を推進した時点では十分に意識しきれていませんでした。当時は外部ツールの導入により、データ活用が一気に解決すると期待していましたが、進めていく中ですぐには思うような成果は見えてきませんでした。

     「ツールを入れること自体がDX推進の目的ではないんだ」という気付きはあったものの、「DX-CO・OPプロジェクト」では新しいDXサービスを次々に生み出して全国各地の生協を巻き込んでいく必要があり、スピード感を重視しなければいけません。我々が従来まで行っていたウォーターフォール型の進め方ではスピード感がでないことを考えると、外部の協力会社とのアジャイル開発を適宜導入していくことを大きな方針として動き出しました。その際にフライウィールを協力会社から紹介いただき、2020年春ごろに初めてお話させていただきました。

     我々はすでに「外部ツールを導入すればなんとかなる」といった発想からは脱却し、DX推進への必要な要件は想定できていたので、フライウィールへはそれら要件をぶつけながら議論を進めることができました。

     地域生協を横断する本プロジェクトを進める上で、大きく2つの課題があり、これらの問題点をフライウィールの方々と共有しながら、データを活用したサービス・ソリューションの打ち出し方について議論が始まりました。一つ目は、全国の生協では先進的なプロジェクトを目指しつつも、十分なデータ活用ができていないケースが散見された点です。データを活用し各生協を横断したDXを推進したい一方で、データが分断されてるため全国で足並みを揃えるのは困難な状況でした。二つ目は、サービス間でのデータ活用状況の違いです。ある生協では、リアル店舗へのデータ活用が相当に進んでいたものの、一方で宅配においては手つかずになっているなど、最適な買い物体験の提供機会を逸している状態でした。

    どんなことを実施したか?

    全国各地への横展開を視野に、地域生協単位で進むサービス開発
    データ活用DXの効果を組合員も職員も実感

     フライウィールとの協業は、データ活用プラットフォームConata(コナタ)™を通じて、いくつか新しい顧客体験を生み出してきています。

     まず、Conata にある “情報検索” を活用した「レシピから食材を注文する仕組み」です。このサービス提供はみやぎ生協からスタートしました。おすすめのレシピや一週間分の献立を組合員に提示し、そのレシピに含まれる必要な食材を検索して簡単に購入できるようにするものです。画期的なのは、各地域生協で食材名や分量など表記ゆれがあるデータを改変することなくマッチングできるようにした点です。
     例えば、レシピの中には “5g” と “小さじ1杯” など分量自体は同じですが表現方法が異なる情報や、​​“しらす” と “ちりめんじゃこ”、“サラダ油” と “キャノーラ油” といったある程度は代替できる食材・調味料があります。すでにある情報を改変することなく、レシピと食材・調味料をマッチングできる仕組みを構築しました。今までの内製ツールだけでは難しかった成果を、実現することができ、とても満足しています。

     次の取り組みは、コープ東北の​​「カタログ・チラシ配布の最適化」です。近年、組合員のニーズ多様化に伴い、宅配利用組合員に配布するカタログやチラシの種類は増加していました。様々な商品を購入できて有り難いと言われる一方で、不要なカタログやチラシを配らないでほしいという声も同時に受けていました。廃棄物削減や再生可能エネルギーの普及を推進する上でも、これは大きな課題です。
     そこで、Conata のパーソナライズ技術を応用し、組合員一人ひとりが必要とするカタログやチラシを送付できるソリューションを構築しました。結果として、大幅なコストカットと売上確保の両立する成果となりました。あるカタログでは最大で50%の配布部数削減に繋がり、同時に購買率は90%台後半で推移しています。

     現在はパーソナライズ技術をさらに進化させ、宅配組合員の購買予測にも取り組みはじめました。組合員一人ひとりの商品購買確率を予測し、その情報をいくつかの顧客体験の向上につなげています。具体的には、① ある商品を再購入するタイミングを予測して「リマインド」、② 未購買でも購買の可能性がある既存商品を「レコメンド」、③ 新商品を「購入確率」予測をもとに「レコメンド」などです。
     本取り組みの実証実験では、オンラインの注文画面におけるレコメンド、リマインド表示で平均購入額が507円上昇しました。また、手書きで発注できる “注文用紙” へのおすすめ表示では、ある地域生協において企画週あたり最大3,780万円の売上純増を達成するなど、多くの成果が確認できています。
     生協では品目数の多さや購入頻度の高さから取り扱うデータは膨大となります。ただ、Conata の DataOps (データ活用をスムーズかつ迅速化する仕組み) により、スピード感を持って何度も改善しながら進めることができています。今後はこの取り組みをコープ東北、コープデリ他へと拡大していく予定です。

     最後に、組織内の人間が主体的にデータ活用を感じ取ることができることを期待し、購入予測など様々なデータの見える化をフライウィールには実施してもらいました。今まで全国の地域生協からは、何か施策を実施しても利益が向上したか分からない、オンライン/オフライン別の運用が大変、誰に何が売れたのか理解できていない、といった課題が挙げられていました。
     Conata のデータ基盤には宅配購買やウェブ行動、組合員属性、企画週商品など生協保有のデータから、購買予測やレコメンド・リマインドを通じた配信結果が一元化されて保管されています。それら統合されたデータを活用し、KPI測定や組合員の属性(年齢・加入年・平均単価など)軸での分析、商品およびカテゴリ軸での分析ができるダッシュボードを構築しました。
     今まで、勘や経験から判断していたことも多くありましたが、統合的な可視化を通じて、施策の効果検証や、どこで誰に何が売れたかなどがすぐに抽出できるようになりました。データドリブンな意思決定を強化できる本ダッシュボードについては、新たな発見を全国の地域生協へと提供していきたいと考えています。

    導入後の効果

    単なるデータ「集約」から、組織横断的なデータの「統合」へと進化
    Conata の導入で数々のデータ「活用」ソリューションを実現

     「DX-CO・OPプロジェクト」は常に発展途上にあり、データ活用において、全国の16地域生協との協業をさらに深めていきたいです。これまで開発した新サービスに対しては一定の評価を得ており、最初にリリースした地域生協から他の地方生協への導入も継続的に広がっています。やはり、フライウィールとのアジャイル開発によってPoCを早いサイクルで回しながら結果改善に取り組み続けられるところも、評価につながっている感触があります。

     今までも各生協単位でも、日本生協連としても外部ツールを利用してデータを「集約」することは進めてきました。フライウィールのデータ処理技術では、膨大かつ多様な形式のデータを相手に、「集約」から一歩先の「統合」まで進められたところに手ごたえを感じました。これで、全生協が保有するデータを、単一のアセットとして扱う道筋がついたことになります。

     「DX-CO・OPプロジェクト」始動当初は、データ活用で解決できるであろう課題が全生協を見渡して山積状態だったと言えます。一つの課題の解決に近づいても、また別の課題が顕在化するといった、ある意味カオスな状況でした。試行錯誤の中で発見したのは、つまるところ、DX推進で解決していきたいこれらの課題は、生協組織内にあるデータが「つながっていない」ことに起因している、ということです。外部ツールの導入でデータを効率的に「集約」してみても、それは目前にある「一つの課題」に対処するSaaS開発だけに終始してしまう場合があるということです。ファイル形式などの違いはそのままに、生協内で分断されたデータをそのまま「統合」まで持っていけるのが、Conataの特色だと思います。

     一旦、データ活用におけるコアな部分に Conata を導入してしまえば、必要に応じて幅広くソリューション展開できるのは、対導入コストの面からも魅力を感じます。Conata が持つレコメンデーションの機能を使って「カタログ配布の最適化」や「商品のレコメンドやリマインド表示」を、計測や貢献分析の機能を使って「分析ダッシュボードの可視化」を実現してきました。データの可視化からリアルタイムな状況把握ができてくれば、研究開発も含めた広い意味でのオペレーションの最適化が図れるDXを推進できる可能性があるのではないかと思っています。

    お客様からのコメント

    本当のデータ価値の議論・提案から、今まで無理だろうとか
    考えもしなかった「新しい事業」への繋がりを導き出していきたい

    フライウィールとの協業を決断されたきっかけをお聞かせください
     「生協が持つ大きなデータをとにかく回して処理して何らかの答えを出してくれるのはどのスタートアップなのか?」と探す中で、フライウィールさんの進め方や技術にはとても期待が持てました。「レシピから食材を注文する仕組み」に関しては、元々は別のベンダーさんと進めていましたが、正直に言うと、あまりパシッとした成果が出ていませんでした。そのような中で、フライウィールさんからご提案いただき、スピード感を持って成果が出せたということで協業を決断させていただきました。
     通常のベンダーであれば、はじめの2週間でデータを揃えるところから始めるところが一般的です。その2週間で「データのフォーマットを合わせます」や「統一のデータ フォーマットを作りました」といったタスクが発生します。確かに、データ処理で難しいことの一つとして、いかに汎用的なデータ フォーマットに変換するかだとは理解しています。ただ、データの取り扱いに長けた企業に任せた場合と比較して、実はその2週間はロスだと思うんですよね。データ活用を生業としているメンバーとプラットフォームがあるからこそ、フライウィールではその「ロス」がなかった。Conataのプラットフォームの中でパーツとしてできてるので、すごい速さのプロジェクト進行が実感できました。
     なお、「DX-CO・OPプロジェクト」の立ち上げのときに、短い期間で様々な成果物を出すアジャイル手法を取り入れてやっていくことを狙いとしていました。フライウィールは短期間にきちっと決めて、スコープをきちっと決めて成果を上げていく。もし駄目なことがあるなら、しっかり駄目と伝えてくれるというのは印象的でしたね。これは確かに、エンジニアからデータサイエンティストなど「データ活用の役者さんが揃っている」強みを感じました。早いですよね。やるとなったら、するっと流れていく印象でした。

    「DX-CO・OPプロジェクト」で実行した、生協内における新しい創意工夫などはございますか
     DX-CO・OPプロジェクトは「制約のない自由に活発に仕事ができる環境を作ろう」というところからプロジェクトが始まっています。
     その意味でも、どの生協も導入していない新サービスを外部の方と協力して推進していくことは比較的柔軟ですが、外部の方とのやり取りが必然的に多くなってきます。実は外部の方々とスムーズかつ活発にやりとりをするために、今まで使用したことがなかった “Slack” や “Backlog”、”Miro” などのコミュニケーション ツールを導入して「武装」を進めました。機動力を高める環境作りに取り組むことも、新たなソリューション開発における一つの創意工夫かと思っています。

    大企業体も安心な進め方、各事業体への安心感ある導入のコツは何かありますか
     ソリューションのテーマによっては「やってみようか」となり、比較的スムーズに導入が広がるケースもあります。ただ、例えばレコメンドエンジンの場合だと、全国の多くの生協では、何かしらの形でレコメンドは導入されています。既存のシステムを挿げ替えるとなると、スピード感を浸透させていくというのはとても難易度が高い活動です。もちろん、内製ではなく、外部とのパートナーシップを実践するというハードルは超えている状態ですが、既存の似たような仕組みがあった場合に、抵抗というか変更を加えるということ自体が大ごとだなと思ってしまいます。
     フライウィールの場合だとエンジン フォーマットは合わせてくれるから本当に挿げ替えるのが簡単でした。データ収集から統合まで、柔軟かつ素早く対応してくれました。また、過去データを活用した何百次元のシミュレーションが可能になって、 PoC で得られた結果を通じて信頼を獲得しながら商用化を実現したため、安心感を持ってプロジェクトを進められました。
     改めて考えると、「データをそのまま預けていただければ処理します」という点が、プロジェクトを動かしやすくしていたと確信しています。他のベンダーとの取り組みの場合、「この形でください」「いつまでにデータをください」など制約がたくさんありました。フライウィールでは、「生データのままで良いので、すぐに提供できる状態でください」とおっしゃっていただき、ここが他の企業とは大きく異なるポイントでした。

    今までの成果に関して、そしてこれからの展望についてお聞かせください
     単純かもしれませんが、フライウィールから提供いただいたレコメンドエンジンはヒット率が高かったです。組合員がオーダーする際に、「買いたい」と思うようなおすすめ商品がレコメンドとして表示されるかどうかはとても重要です。以前は「これはいらないよ」と思われる商品がほとんど並んでいました。そこをフライウィール社のレコメンド エンジンに刷新したことで、「いいね、買ってみよう」と思うような商品が表示されるようになりました。自分自身でサービスを利用してみても「買ってみよう」という感覚を持ちましたし、実際に大きなビジネス成果を得ることができました。
     成果としては、PoCの際にかご入れ商品のうち20%はリマインド・レコメンド経由で購入されていることが確認できました。これほどまでに高い確率で購入されることはなかなかないのではないかと感じます。人間の心理として過去に購入したことがある商品を「また注文しよう」となることはありますが、一度も購入経験がないものをおすすめされて、実際に購入されているのを見ると、その力にとても驚きました。
     今後、データ活用を推進できる分野はまだまだ存在すると思ってます。意外かと思われますが、生協はデータを適切かつ大量に保有しています。ただ、宝の持ち腐れではないのですが、データ活用をなかなか踏み出せてなかった組織体だとも理解しています。今後もフライウィールとともに本当のデータの価値を議論し、提案していただき、今まで無理だろうとか考えもしなかった「新しい事業」への繋がりを導き出していきたいです。

    掲載日: 2023年 3月 3日

    日本生活協同組合連合会

    全国には、さまざまな生協がありますが、それぞれが別法人として事業や活動を行っています。日本生協連は、全国各地の生協の参加で支えられている連合会です。

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    (左)峰村健史 氏 事業企画・デジタル推進本部 デジタルマーケティング部 部長(取材当時)

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