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パーソナライゼーション エンジン導入の障害を取り除く

はじめに

こんにちは。フライウィールでデータ アナリストをしている吉野です。前回の「近未来のマーケティングを実現するパーソナライゼーション エンジンとは?」では、一歩進んだパーソナライゼーションを顧客に提供できるその内容やメリットについてお伝えしました。他社に先駆けて導入していきたい、その重要性も3つのポイントに分けてまとめています。
本編では、パーソナライゼーション エンジンの導入に至って、陥りがちな障害についてまずは触れていきます。それを踏まえたうえで、顧客へのパーソナライゼーションに関わる力を最大限に発揮するために利用できるツールもご紹介します。

目次

(前編:リンクはこちら

  • パーソナライゼーション エンジンとは?
  • パーソナライゼーション エンジンを導入するメリット
  • なぜ今、パーソナライゼーション エンジンが重要なのか?

(本編)

  • パーソナライゼーション エンジン導入を阻む一つの要因
  • パーソナライゼーション エンジンを利用するには
  • まとめ

 

パーソナライゼーション エンジン導入を阻む一つの要因

現時点でどれほどの企業がパーソナライゼーションに関わる力を最大限に発揮できているのでしょうか。Sitecoreの調査*によると、ブランド企業は顧客データをロイヤルティ促進に向けた戦略に転換する力を備えていないことがわかりました。具体的には、64%の組織がデータを収集していないか、データがサイロ化されて保存されており、結果として顧客にパーソナライズされていない体験をさせてしまっていました。
*出典 : New Study Reveals Brands Fail to Use Customer Data to Deliver Personalized Digital Experiences
「言うは易く行うは難し」で当たり前かと思われますが、顧客数が増えれば増えるほど、各個人に対して適する提案を行うことは大変困難です。技術的、資金的、人的、時間的の不足による影響がありますが、決定的な理由としては、WebサイトやEメール、広告、店頭販売などのチャネルでパーソナライズされた顧客体験を提供するためのデータ量の欠如やそのデータの活用スキルの欠如にあります。つまり、マーケターのミッションはユーザーを熟知して良好な関係を築きあげることですが、そのためには統合されたデータとその技術力が不可欠です。
Google アナリティクスや POS データなど連携が容易なデータの活用はもちろんのこと、例えば商品の付加情報や在庫管理データ、物流関連のデータなど多くの企業内に眠っているデータは十分に顧客に還元されていません。例えば、在庫管理データが統合されていない場合、顧客の購買プロセスの最後で在庫切れが判明し購入できないなど、著しく顧客体験を損なうことになります。
また、パーソナライズされた体験を提供するには、収集したデータを適切に使用または分析するためのスキルや、毎秒数百人から数千人規模の同時ユーザーからのリクエストをサポートできなければなりません。リアルタイムでの行動データ処理も求められることから、大規模分散処理などのスキルに長けていなければいけません。

パーソナライゼーション エンジンを利用するには

世界中を見回すと、様々なパーソナライゼーション エンジンがあり、それぞれのツールが様々な特長を持っています。まだ日本語対応しているツールは数少ないのですが、ここでは世界的に認知度が高いツール 2 つを厳選して紹介いたします。

Dynamic Yield
米国Dynamic Yield(ダイナミックイールド)は、Webやアプリ、メール、IoT、コールセンターなど、ユーザーとのタッチポイントで AI を活用してパーソナライズされた顧客体験を提供する AI プラットフォームを提供しています。プラットフォームのデータ管理機能は、顧客に統一されたビューを提供し、パーソナライズキャンペーン、A/Bテスト、商品やコンテンツのレコメンド、採用活動などに活用できます。
注目すべき点は、Dynamic Yield は日本向けにローカライズされたプラットフォーム「Dynamic Yield」のサービス提供を始めています。すべての機能が日本語のダッシュボードで利用できる点が大きなメリットです。なお、Dynamic Yield 社は、マクドナルドの100%子会社です。

Emarsys
オーストリアのウィーンに本社を構える Emarsys は、B2C企業向けのクラウドマーケティングソフトウェアを提供しています。同社は、機械学習とデータサイエンスをパーソナライゼーションとマルチチャネル配信に組み合わせることで、顧客に最も効果的にリーチできるように支援しています。16のグローバルオフィスに500人以上の従業員を擁し、140カ国で1,300社以上のクライアントにサービスを提供しています。
注目すべき点は、最近追加された「Visual Affinity」機能です。この機能では、利用者が画像などの非構造化データを構造化データに対して追加することができ、製品のレコメンデーション精度を更に向上させることができるようです。

なお、フライウィールでは日本のマーケットに特化したパーソナライゼーション エンジンを提供しており、詳細な内容については 弊社プロダクトマネージャーより本ブログ サイトを通じて紹介する予定です。乞うご期待ください。

まとめ

今回は「パーソナライゼーション エンジン」の定義や重要性について簡単にご紹介しました。
スマートフォンの普及や新型コロナの影響により、消費行動が劇的に変化してきました。特に、サービスのパーソナライズに対する顧客の要求が厳しくなり、その要求に応えられているサービスと、できていないサービスでのギャップが大きく開いていく一方です。PC普及以前に電卓が頼りだった世界と、様々なソフトを組み合わせてPC上でデータ処理ができる世界では、おのずとサービスレベルが異なります。それと同様なギャップが、今新たにDX推進の名のもとに発生していると言えるかもしれません。
適切なタイミングで、個々の顧客に対してパーソナライズされたアプローチを行うことが欠かせません。これを実現するためにも、利用可能なデータを最大限活用し、時代を先駆けてパーソナライゼーション エンジンを積極的に導入していきましょう。


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また、データアナリストとしてクライアントのDXをデータの観点から支援していくメンバーの採用も積極的に行っています。



Author: 吉野 祐輝(フライウィール データ アナリスト)
機械学習や統計解析を用いて、顧客データの要件分析から製品導入時の効果検証までデータ分析に関わる業務を全般的に担当。前職のGoogleでは、日本市場を含めたアジア太平洋地区のアプリディベロッパーに対して、データ分析を活用したマーケティング戦略策定を支援。