課題点・導入のきっかけ
西武グループのDX推進、海外の先行事例、
そしてコロナ禍による広告主のニーズの変化を受け
「プログラマティックDOOHサービス」の構想を立ち上げ
株式会社ブルーミューズ(以下、ブルーミューズ)は、西武ホールディングスのもと不動産事業やホテル・レジャー事業、都市交通・沿線事業を展開する西武グループの一社として、主にコンテンツや広告の事業を展開しています。今回のフライウィールとの取り組みで2024年10月より提供を開始した「プログラマティックDOOHサービス(Digital Out of Home の略、デジタル屋外広告のこと)」は、池袋駅や西武新宿駅といった西武鉄道の駅などに設置されたデジタルサイネージをはじめ、デジタル屋外広告の価値を最大化することを目的としており、デジタルとデータでOOH(Out Of Home の略で、家以外の場所で接触するメディアの総称)の枠組みの変革支援をする価値共創プラットフォーム「SEIBU infini Connect」を活用していることが特徴です。
この「プログラマティックDOOHサービス」の構想自体は2020年頃に立ち上がっており、西武グループにおけるDX推進の機運や欧米でプログラマティックDOOHの技術や事例が先行していたこと、そしてコロナ禍による広告主さまのニーズの変化が背景にあります。特に広告主さまのデジタル屋外広告に対するニーズはコロナ禍前後で大きく変化したと考えており、実際の人流データに基づくターゲティング配信や時間単位による広告費の計算など、インターネット広告的な考え方が求められるようになったのです。以前よりもインターネット広告が一般的になったことに加え、コロナ禍の期間において人流が著しく減ったことでデジタル屋外広告に対する考え方がシビアになったことによる変化だと考えています。こうした変化を受け、西武鉄道が保有する広告媒体の価値を最大化するために「プログラマティックDOOHサービス」の立ち上げが始まりました。
しかし、このプロジェクトの背景には、さまざまな課題が山積していたのです。大きな課題のひとつとして、デジタル屋外広告の配信管理が駅単位や車両単位でばらばらにサイロ化していたことが挙げられます。基本的には広告媒体ごとに広告配信や運用保守がされており、一元管理されている状態ではなかったのです。そのため、駅や車両といった媒体を横断した企画や広告配信には膨大な時間と手間がかかっていました。この課題を解決するためには、デジタル屋外広告の配信を一元的に管理できるプラットフォームが必要だったのです。
プラットフォームを立ち上げるにあたっても課題はありました。国内にはすでにデジタル屋外広告の配信や定量的な効果測定、レポーティングまでを一括管理できるプラットフォームがすでに存在し、高い国内シェアを占めています。確かに他社製のプラットフォームを導入したほうが「プログラマティックDOOHサービス」の提供時期は早まったかもしれません。
しかし、広告媒体を保有するオーナーとしては、自分たちの広告の媒体価値がプラットフォーム側に一方的に決められてしまうこと、そのことにより自分たちの意思で広告事業をハンドリングできなくなることに懸念を抱いていました。
こうした背景からブルーミューズ独自の挑戦として、高い独立性を維持したプラットフォームを自社独自に構築し、「プログラマティックDOOHサービス」の提供を目指すことを決定したのです。
どんなことを実施したか?
打ち合わせでは、目指す世界観を議論。足を使った現地調査と
Conata® (コナタ) の活用で構築されたプラットフォーム
自社独自でデジタル屋外広告のプラットフォームを構築するには、データ活用領域における知識とノウハウ、過去実績を持つ協力パートナーが必要不可欠でした。そこで複数社でサービスの比較検討をしていく中で出会ったのがフライウィールと、データ活用プラットフォーム Conata® (コナタ) でした。
協力パートナーに求めていたのは、プラットフォームの構築から実際の運用までを支援する一気通貫のサポートや、要件定義ありきの開発ではなくプラットフォーム構築後のデータ分析、運用から逆算した柔軟な開発体制です。フライウィールは私たちが求める要素をクリアしていたことに加え、GAFAMをはじめ国内外の有名企業出身のベテランの方がシステム開発やデータ活用に携わるという安心感や、定量的、論理的なプラットフォーム構築の提案が高評価でした。
また、交通インフラの業界ですでに「プログラマティックDOOHサービス」と同様のプロジェクトに取り組まれていた実績も、ブルーミューズとの取り組みの後押しになっています。
取り組みの打ち合わせで特に印象に残っているのが、フライウィール横山社長の「西武グループとしてどのような世界観を目指しているのか」との問いかけでした。「プログラマティックDOOHサービス」を実現するだけでなく、ドームやホテルなど、西武鉄道以外のグループアセットにも「プログラマティックDOOHサービス」を展開していくといった将来の展望やサービス提供の先で実現したい世界観などを一緒に議論しながら取り組んでいきました。加えて、プラットフォームの構築に止まらず、構築後はどのように広告代理店さまへ提案していくか、広告主さまにとっての付加価値はどこにあるのかという視点も、定例会のたびにディスカッションしています。
プラットフォーム構築のフェーズでは、限られた予算内でより正確な人流とデジタル屋外広告の効果を測定するため、池袋駅や西武新宿駅、所沢駅など主要駅へフライウィールの皆さんには実際に足を運んで、現地でさまざまなデータを測定いただきました。たとえば、改札から駅構内に設置された「駅メディア」への距離や、実際のサイネージの見え方などの生の情報を現地で収集し、「プログラマティックDOOHサービス」内の計算式やデータ加工に反映いただいています。
Conata をベースに構築いただいた「プログラマティックDOOHサービス」とCMSの連携についても、フライウィールのエンジニアチームに安心してお任せできました。CMSの運用保守をお願いしている協力企業さんとの認識のすり合わせや技術的な調整をお願いでき、助かっています。
導入後の効果
小規模の広告予算、鮮度が高いターゲット配信、広告の効果検証を実現。
配信管理も楽になり、広告主や広告代理店、競合他社からも高評価
2024年9月にプレスリリースを配信し、「プログラマティックDOOHサービス」の提供をスタートさせていただきました。広告主さまと広告代理店さまに訴求したいサービスの強みは以下の3つです。
① 配信期間や広告費の条件が低く、低予算でも手軽に始めることができる
② 毎週更新されるオーディエンスデータにより、鮮度が高いターゲティング配信ができる
③ 配信後のレポートにより、広告の効果検証ができる
弊社の場合、大規模な広告予算を扱えるナショナルクライアントさまだけでなく、西武線沿線で事業を展開する中小企業の広告主さまも重要な存在です。そのため、小規模の広告予算でも着手しやすい広告商品の開発は、弊社の広告事業にとって優先度の高い取り組みでした。
実際、アルバイトを募集している企業の方から、主に学生をターゲットにしたデジタル屋外広告の配信に興味があるとのお声をいただいております。これまでのデジタル屋外広告は1週間ずっと配信される仕組みでしたが、「プログラマティックDOOHサービス」によって学生の人流が多くなる通学と帰宅の時間帯に絞って広告を配信することで、投資対効果(ROI)の向上が期待できます。また、小規模の広告予算から始められることは、デジタル屋外広告を活用したことがない新規広告主さまの開拓という効果を見込める点も、高く評価されています。
デジタル屋外広告の配信管理が駅単位や車両単位でサイロ化していたという課題についても、広告の空き枠に自社広告を配信することで効率化できそうであることを確認しました。従来の仕組みであれば、週ごと・枠ごとに配信する広告を設定しなければならず、手間がかかっていました。「プログラマティックDOOHサービス」を導入したことで、ひとつの配信管理システム上で広告の配信設定が完結するようになり、複数のシステムをまたいで広告枠を設定する必要がなくなりました。今後、実際に広告主さまの広告配信作業も効率化できるものと期待します。
「プログラマティックDOOHサービス」に対しては、すでにご案内済みの広告主さまや大手の広告代理店さまから取り組みに対する一定の評価をいただいています。広告主さまからは、これまでデジタル屋外広告は昼夜問わず広告を配信しつづけなければならないイメージだったところ、ターゲット含有率が高い枠、時間帯に効率的に配信できることが、経済的な合理性があるとの声を聞いています。
また、交通広告の取扱高が大きい広告代理店さまだけでなく、横のつながりがある競合他社さまからも世界的にも先進的な、チャレンジングな領域にしっかり取り組んでいる姿勢を評価いただきました。
お客様からのコメント
鉄道だけでなく、ドームやホテル、商業施設などを保有する
西武グループの強みを活かした広告事業を模索していきたい
これからの展望についてお聞かせください
同じく交通広告を取り扱う競合他社さまと比べ、西武グループ全体の強みは鉄道に加え、ドームやホテル、商業施設などを多数運営していることです。西武鉄道や各施設を利用されているお客さまに最適な広告を配信するだけでなく、鉄道からホテルへ、商業施設から鉄道へといったお客さまの行動経路にターゲティングした配信設定を模索していきたいと考えています。
枠の場所や時間が縛られていたデジタル屋外広告を開放し、よりインターネット広告のような「お客さま一人ひとり」に焦点をあてた広告を配信し、広告主さまや広告代理店さま、そして弊社にとってもメリットがある広告事業のあり方を今後も引き続き模索していきたいですね。
最後に一言お願いいたします
フライウィールとの取り組みで感じたのは、担当の皆さん全員が伴走力と人間力が強いことです。これまで私たちは、鉄道のデータこそ持ってはいるものの、どのように生かしていくべきかまでは考えが至っていなかったのですが、フライウィールの皆さんに伴走していただくことで広告価値を高めていくことに正面から向き合うことができました。
私たちのように広告配信や、社内のデータ活用に悩みを感じている方はぜひ一度、ご相談してみてはいかがでしょうか。
掲載日: 2024年 11月 29日